第93章

言い終えるより早く、松村礼嗣のスマホがけたたましく鳴った。

画面に浮かんだのは、屋敷の執事の名。

松村礼嗣はすぐに通話を取る。受話口の向こうから飛び込んできたのは、切羽詰まった声だった。

『若様、大変でございます! お婆さんが、たった今届いた手紙をお読みになった途端、倒れられました! かかりつけの医師は呼びましたが、すぐお戻りください!』

「手紙?」

松村礼嗣の声が、すとんと底へ落ちる。

『それが……封筒に「松村お婆さん 親展」とありまして、私どもは勝手に開けられず……。ちらりと見えた文面が、奥様に関わるようで……お婆さんは読み終えた瞬間、顔色が真っ青になって、そのまま――』

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