第96章

数日が過ぎても、松村礼嗣は平原綾香と連絡が取れなかった。

電話は何度かけても繋がらない。綾香の携帯はずっと電源が落ちたまま。

送ったメッセージは、まるで海に沈んだ石だ。返事もない。既読もつかない。何も――ない。

部下に綾香のマンションも確認させた。鍵は壊された形跡もなく、室内も普段どおり。ただ、本人だけがいない。車はガレージに停まったままなのに、パスポートと免許証だけが消えていた。

まるで、空気に溶けたみたいに。

『お父さん……お母さん、どこ行っちゃったの?』

平原小春が小さな顔を見上げてくる。目の縁は赤く、声は泣き出す寸前だった。

松村礼嗣はしゃがみ込み、末娘を抱き上げる。

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