第102章

部屋の奥から危険な気配が滲み出してくる。毒蛇みたいに、乙村彩羽の全身へじわじわと絡みつき、逃げ道を塞いでいく。

彩羽は息を詰めた。もう、引き返せない。

表情を崩さないまま中へ入り、果物をテーブルに置く。

「石塚若様、田村さんからお預かりした果物です」

その間じゅう、石塚勝矢の視線は彼女の足取りを追い続けていた。

彩羽は必死にその視線を無視し、皿を置くと、すぐに身を起こして立ち去ろうとする。

「置きました。ほかにご用がなければ、失礼いたします」

そう言って踵を返し、早足で扉へ向かった。

「止まれ」

背後から、冷えた声が落ちてくる。

彩羽の足がぴたりと止まった。それでも、まだ...

ログインして続きを読む