第103章

「乙村さん……」

階下では、田村がずっと待っていた。乙村彩羽が二階で石塚勝矢と揉めでもしたら、と気が気じゃなかったのだ。

降りてきた彼女の顔色が冴えないのを見て、理由を訊こうとした。だが――乙村彩羽は答える気配すらない。

「疲れたので、先に休みます」

それだけ早口に言い捨て、皿を置くと、踵を返して足早に自室へ引っ込んでいった。

田村はその背中を見送り、ふと二階へ視線を上げて、堪えきれずにため息を吐く。

あの様子では、話し合いは穏やかに終わらなかったのだろう。

このまま木宮さんが屋敷に入ってきたら、家の中は一体どんな空気になるのか……。

乙村彩羽は部屋へ戻るなり、真っ先に浴室へ...

ログインして続きを読む