第105章

車は石塚家の別荘の門前で、するすると速度を落として止まった。

石塚勝矢は結局、裁判所へ戻らなかった。自分の手で、彼女をここまで送り届けたのだ。

ドアが開く。高橋遠矢が後部座席へ回り、木宮朱理を支えようと手を伸ばした。

だが朱理は、彼の存在など視界に入っていないかのようだった。見つめる先は石塚勝矢だけ。彼の袖をきゅっと掴んで離さない。

「若様……」

高橋遠矢は困ったように息を吐く。

勝矢は軽く手を振り、放っておけと合図した。そして反対側から降りると、朱理に向けて手を差し出す。

朱理は従順にその手に指を重ね、車から降りた。

勝矢は彼女を支えながら、別荘の中へと連れていく。

昼前...

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