第109章

小崎はもともと、乙村彩羽を心配して電話をかけてきた。

ところが少し話すうちに、いつの間にか互いを慰め合う形になっていた。

石塚勝矢が木宮朱理のためにそこまでするなんて、誰だって信じたくない。けれど同時に、可能性の大きさを無視もできない。

乙村彩羽の気持ちは沈む一方で、時間も遅い。そろそろ切ろうとした、そのとき。

小崎がふいに言った。

「実は今日の午後、彩羽さんの大学の先生が俺のところに来たんだ」

胸がきゅっと締まり、言葉がつかえる。

「中野先生ですか? せ、先生……何て……」

小崎の声には、痛ましさが滲んでいた。

「先生さ、ひと目で『あれは君の癖だ』って分かったって。君が戻...

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