第110章

乙村彩羽の沈黙は、村上の推測をいっそう確信へと変えた。

村上は歯を食いしばってスマホをしまい込み、乙村彩羽の手首を乱暴につかむと、刺すような声で詰め寄った。

「乙村、誰にそんな度胸もらったの? 木宮さんに楯突くなんて。……昔、自分が木宮さんに何したか、忘れたわけじゃないよね?」

手首を握り潰されるように痛み、乙村彩羽は我に返る。

「その人、私じゃない」

これ以上、村上と揉める気力もない。余計なことを言い合うのも、もううんざりだった。

村上が鼻で笑う。

「じゃあ誰なのよ。まさか、これがあんたの――」

「私の、何?」

乙村彩羽は気力を振り絞り、疑いの視線を真正面から受け止めた。...

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