第115章

空気が、すうっと死んだ。

乙村彩羽はしばらく反応できず、ようやく石塚勝矢の言葉に潜む意味を飲み込む。

「……その三百万、私が身体を売って手に入れたって言いたいの?」

怒りで唇が震えた。

そういう稼ぎ方を、頭の片隅で否定しきれなかった時期はある。けれど実際にやったことは、一度もない。

石塚勝矢が本気でそう思っている。――彼の目に映る自分は、いったいどれほど卑しい存在なのだろう。

「違うのか?」

返ってきた一言は刃物みたいに胸の奥へ突き刺さり、息が詰まった。

乙村彩羽は呆然と目を見開く。そこにじわりと涙が溜まり、揺れる光が痛々しいほどに弱々しく見えた。

さすがに石塚勝矢も苛立ち...

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