第120章

石塚勝矢がいつ戻ってくるか分からない。乙村彩羽は、必要最低限の荷物だけをさっとまとめた。

小崎が「隠しておいた」と言っていた一万円は、とっくに跡形もなく消えていた。心配をかけたくなくて、彩羽はそのことを口にしない。

片づけるべきものをすべて整えたら、あとは――出ていくのに最高のタイミングを待つだけ。

午後の仕事中、乙村彩羽は何事もない顔で振る舞った。

けれど時間が一秒ずつ進むたび、胸の奥は焦りで焼けついていく。

今夜、石塚勝矢が帰ってこなければ、それが逃げる最良の機会になる。

もし突然戻ってきたら――難易度は一気に跳ね上がる……。

午後いっぱい、彩羽は心の中で祈り続けた。どうか...

ログインして続きを読む