第129章

「陸田若様」

石塚家でメイドとして過ごす日々が身に染みついてしまったのだろう。乙村彩羽は陸田清人に挨拶する時も、背筋を伸ばして恭しく立ったままだった。

陸田清人は訳が分からないといった顔でしばらく彼女を見つめ、それからようやく彼女の経緯を思い出したように目を細める。

「なんで立ってる。別に、ここでもメイドを続けろなんて言ってない」

乙村彩羽の瞳がわずかに揺れ、視線を落として彼の隣のソファに腰を下ろした。

陸田清人は彼女の顔色をじっと観察し、ふいに泰然とした口ぶりで訊ねる。

「どうした。連れて来られて不愉快か? それとも石塚家に戻りたい? 送らせようか」

見間違いでなければ、乙村...

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