第130章

陸田清人にひと声かけ、乙村彩羽は踵を返して二階へ上がった。

あの男に愛想笑いで付き合う気はない。それに――いまは、少し冷静になる時間が必要だった。

部屋に入ると、彩羽はぼんやりと椅子に腰を落とした。

先生の、あれほど心配そうな言葉を思い出すたび、鼻の奥がつんと痛む。

自分が先生にとって、いちばん誇りにしていた教え子だったことさえ、もう忘れかけていた。

三年前。犯罪の容疑者として身柄を拘束される、その前日まで――先生は「しっかり準備しなさい」と言って、業界でも指折りの展示会に連れていくつもりでいてくれた。

それなのに翌日、彩羽は展示会場の入口で、衆目の中、警察に連れていかれた。

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