第25章

二人が膠着していると、廊下の向こうから石塚勝矢が同僚と話している声が聞こえてきた。

「石塚裁判官、お帰りですか? 早く中へ。婚約者さん、また来てますよ」

さっき木宮朱理に軽口を叩いていた、あの声だ。

その言葉が落ちるや、廊下の落ち着いた足音がたちまち早まった。

事務室のドアが開き、石塚勝矢が氷みたいな表情で入ってくる。

「どうして来た。裁判所に来るなら、事前に俺に言えって言っただろう」

木宮朱理は彼を見、次いで目の前の乙村彩羽へ視線を移し、みるみる顔色を失っていく。

「ごめんなさい、勝矢。通りがかったとき、少し具合が悪くなって……顔が見たくて」

「それに、乙村さんもいらしてた...

ログインして続きを読む