第29章

乙村彩羽は、ひっそりと部屋の隅に立っていた。

部屋の片づけを終え、寝具をもらおうと田村を探しに来ただけだった。まさか、石塚勝矢の口からあんな言葉を聞くことになるなんて、思ってもいなかった。

もともと、給料のことなど考えたこともない。

石塚勝矢が彼女をここに置いて召使いをさせているのは、ただ屈辱を味わわせるため。それくらい、わかっていた。

けれど、本人の口からそう突きつけられると、皮肉なものだと思えてしまう。

召使いの賃金なんて、月にいくらあるというのだろう。

石塚勝矢は、彼女がわずかな金を手にしただけで逃げ出すと、そこまで警戒しているのか。

いったい、いつまで彼は彼女を苦しめる...

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