第32章

前日のメイドの件が田村の耳に入ったのか、そのあとの数日、田村の乙村彩羽に対する態度は、ようやく以前ほど刺々しくはなくなった。

少なくとも、乙村彩羽は毎日ちゃんと食事にありつける。仕事が少し増えたところで、別にどうってことはない。

週末の朝早く。乙村彩羽が台所で洗い物を終えて出てくると、田村に呼び止められた。

「庭の花、剪定の時期よ。あなたがやって」

手はまだ濡れたまま。彩羽は、機械はどこだろう、と口を開きかけた。

乙村家にいた頃、庭いじりは使用人が道具を使って手早く片づけていた。三年も経てば、もっと便利なものがあるはずだ。

だが、田村が押しつけてきたのは一本の剪定ばさみだった。

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