第35章

「体が完全に回復するまでは、ここで休め」

 ベッド脇に立った石塚勝矢は、彼女に起き上がる隙すら与えなかった。

 乙村彩羽は目を上げた。この人がいったい何をしたいのか、わからない。

 ただ辱めたいだけなら、どうしてこんなふうに、自分を気遣っているような錯覚を抱かせるのだろう。

 石塚勝矢は彼女の布団を整えながら、自分でも少し世話を焼きすぎたと気づいたらしい。

 しばしの沈黙のあと、その表情はまた冷えきったものへ戻る。

「明後日、バーの件で警察が事情を聞きに来る。そんな有様で、石塚家まで巻き込むつもりか」

 乙村彩羽の目がかすかに揺れた。胸の奥にわずかによみがけた温かさは、あっとい...

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