第40章

乙村彩羽は、深く考えなかった。

 三年ものあいだ、彼女は不意に降りかかる危機に慣れきっていた。

 これ以上ひどい目にも、もう十分遭ってきた。今さら怖いものなんてない。

 彩羽は身を翻し、物置へと戻った。

 だが、物置の前まで来たところで、石塚勝矢がすらりとした長身でそこに立っているのが目に入る。

 気のせいかもしれない。けれど背中を向けているだけなのに、どこか機嫌が悪そうなのが伝わってきた。

 乙村彩羽は足を止め、わずかに間を置いてから声をかける。

「石塚若様、何かご用でしょうか」

 その声を聞いて、石塚勝矢が振り返った。淡々とした目が、彼女の全身をひと撫でするように見やる。...

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