第49章

石塚家へ戻る車中、石塚勝矢はひと言も発しなかった。

ようやく気持ちの糸が緩んだ乙村彩羽は、うとうとしているうちに眠りに落ちてしまう。

次に目を覚ましたときには、車はすでに屋敷の玄関前に停まっていた。

運転手がドアを開け、石塚勝矢は車を降りると、そのまままっすぐ屋敷の中へ入っていく。

乙村彩羽も慌ててそのあとに続いた。

二人が前後して玄関をくぐった途端、田村と小崎が駆け寄ってきた。

一晩じゅう待っていたのだ。心配でたまらなかったのだろう。

「若様、ご無事でしたか。こんなに遅くまで……何かあったんですか?」

田村は気遣わしげに石塚勝矢の様子を確かめる。

腕の傷は袖に隠れていて、...

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