第50章

「失礼ですが、どちら様でしょうか」

乙村彩羽はためらいがちにそう尋ねた。

かけ間違いかと思った。けれど、相手は最初からちゃんと自分の姓を呼んでいた気もする。

電話の向こうの男の声に、わずかな落胆がにじむ。

「乙村さん、もう忘れたんですか。つい二、三日前に、あなたから電話をもらったばかりなのに」

乙村彩羽はますます首をかしげた。

記憶をたどってみる。このところ自分からかけた電話といえば、陸田グループの応募窓口くらいしかない。

この声……。

「陸田グループのご担当者様ですか?」

探るように訊くと、相手は肯定も否定もせず、ふっと笑った。

乙村彩羽は訝しげに眉を寄せる。

「ご用...

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