第58章

物置の中で。

乙村彩羽は脇目も振らず、デザイン画を描いていた。

いったん集中すると時間を忘れる。空腹さえ感じなくなるほどに。

そのとき、不意に物置の扉が乱暴に開いた。

乙村彩羽はびくりと肩を震わせ、とっさに描きかけの紙を隠そうとした。

このところ石塚家で味わってきたあれこれのせいで、彼女はもう誰一人として信用できなくなっていた。

だが、気づいたときにはもう遅かった。

「何を隠している」

頭上から、石塚勝矢の低く冷えた声が降ってくる。

乙村彩羽は紙を持つ指先にぎゅっと力を込め、それを背中に回したまま、どうしても差し出そうとしない。

無意識のうちに、ほかの使用人たち以上に、石...

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