第63章

女はまばたきひとつせず、出来の悪い言い訳を並べ立てていた。

乙村彩羽は顔をぬぐい、玄関口に立ったまま無表情で向かいの数人を見据える。

「昨日の夜も、あなたたちね」

言い切る声に迷いはない。

数人が互いに目配せし、笑みがいっそう濃くなる。

「乙村さん、何のことですか? 私たち、さっぱり分かりませんけど。言ったでしょう、うっかりなんですって」

乙村彩羽の視線が、先頭に立つ女へ落ちた。

「しらばっくれないで。声で分かる」

連中も馬鹿じゃない。昨夜ほとんど喋らなかった人間を、わざわざ前に出してきたのだろう。

けれど、あんな状況では感覚が研ぎ澄まされる。たった一度耳にしただけの声でも...

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