第72章

「……本当に、お前が乙村彩羽なのか」

耳元で、石塚勝矢の嘲るような声が響いた。

乙村彩羽ははっと我に返り、氷みたいに冷えた視線を受け止めて、ようやく腑に落ちる。

突然そんなことを訊いたのは、ただ確かめたかっただけだ。目の前にいる女が――三年前の乙村彩羽と同一人物なのかを。

胸の奥に、ばかばかしさが湧き上がる。

「石塚若様、ほかにお聞きになりたいことはございますか。何でもお答えします」

「いくら訊いたところで、俺の立場は変わらない」

石塚勝矢の陰気な視線が、穴が空くほど彼女を射抜く。

――まだ、信じていないのだ。

三年前の彼女は、彼に盲目的に縋りついていた。それが今は、あまり...

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