第76章

「お嬢様、こちら……お味はいかがでしょう?」

キッチンで小崎が一品仕上げ、乙村彩羽の皿に取り分けて差し出した。

だが、皿が目の前に来ても彩羽はぴくりとも反応しない。

小崎の瞳に不安の色がよぎる。皿をいったんテーブルへ戻し、そっと彩羽の頭に手を置いた。

そのぬくもりに、乙村彩羽ははっと我に返る。

「……今、私に話しかけた?」

「お嬢様。この二日、どうなさったんです? また誰かに嫌なことでもされたんじゃ……。言ってください。わたし、執事役は引き受けませんでしたけど、今でも多少は口が利きます。何人かクビにするくらいならできますから」

熱を出したあの日から二日。お嬢様はときどきぼんやり...

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