第84章

朝食

乙村彩羽は、自分の頭上に大太刀がぶら下がっている気がしてならない。いつ落ちてきてもおかしくない――そんな予感。

箸を動かしながら、向かいにいる男の様子をそっと窺う。

石塚勝矢が食べ終えて箸を置いた瞬間、彩羽の心臓はひゅっと吊り上がった。咀嚼の速度も、目に見えて落ちる。

「食い終わったか」

低い声が落ちてくる。

彩羽は箸を置き、口元を拭った。

「……はい」

もともと食欲なんてない。ただ、食べているふりをしていただけだ。

石塚勝矢が立ち上がる。

「着替えろ」

胸の奥のざわつきが、じわじわと膨らんでいく。彩羽は顔を上げ、拒む余地のない視線とぶつかった。唇を噛み、立ち上が...

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