第85章

二人は石塚勝矢に連れられ、彼の執務室へ向かった。

執務室を出るころには、石塚勝矢はすでに裁判官の法服に袖を通し、眼鏡をかけていた。三年前と、何ひとつ変わらない。

その姿を目にした瞬間、乙村彩羽の身体がびくりと硬直し、呼吸まで乱れた。

小崎寧音が異変に気づく。

「彩羽、本当に大丈夫?」

乙村彩羽は深く息を吸い、視線を落とした。

「大丈夫。行こう」

そう口にしながら、脇に垂らした手のひらは、自分で握り潰しそうなほど強く爪を立てていた。

石塚勝矢は二人の前を、視線ひとつ寄こさずに通り過ぎる。冷たい風がすっと通ったような気配だけを残して。

乙村彩羽は歯を食いしばり、その背を追った。...

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