第90章

二人の姿が別荘の玄関先から消えたのを見届けて、小崎はようやく我に返った。振り返り、悔いるように乙村彩羽を見つめる。

「お嬢様、申し訳ございません。私のせいでご迷惑を……」

乙村彩羽の胸は重く沈んだ。そう言われて眉をひそめる。

「あなたのせいじゃない。私を守ろうとしてくれただけ。木宮朱理が……あの人が……」

石塚勝矢はいつも言う。彼女は芝居をしている、嘘をついている、と。

けれど三年前からずっと、いちばん上手に芝居をしてきたのは、ほかでもない木宮朱理だった。

石塚勝矢はそのたび、迷いなく彼女を信じた。

木宮朱理が嘘をついたあと、石塚勝矢は必ず自分のやり方で彼女の鬱憤を晴らしてやる...

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