第92章

しばらくして、小崎と田村が部屋から出てきた。

乙村彩羽は階段の踊り場にひとり立っていた。扉の開く気配を耳にすると、慌てて表情を整え、何事もなかったように振り返って二人を迎える。

「お嬢様」

小崎は諭すように彩羽の手を握った。

乙村彩羽は無理に笑みを作る。

「大丈夫。ちゃんと自分のことは自分で面倒みるから、心配しないで」

小崎は彼女の眉や目元をじっと見つめた。瞳には、離しがたい気持ちと痛ましさが滲んでいる。

三年ものあいだ、昼も夜も会いたいと願い続けて、ようやく再会できたお嬢様。なのに、またこんなに早く離れ離れになるなんて。

乙村彩羽はおとなしく小崎を抱きしめた。

「それより...

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