第406章

「箱ばかり見ていないで、中身をご覧」

水原悟は忍び足で彼女の傍らへと歩み寄った。

彼の意識のすべては、深く心を奪われてやまない、その美しい横顔だけに注がれている。

唐沢楓は戸惑いと期待を胸に抱きながら、少し汗ばんだ両手をスカートで無造作に拭った。

その愛らしい仕草を、男が見逃すはずもない。愛おしさで胸が疼き、全身の血液が滾るのを感じた。

唐沢楓は、恐る恐る箱を開けた。

桜色と天青色が互いに呼び合うような、言葉を失うほどに美しい『月映しの盃』が、彼女の目の前に現れた。

まるで夢のように、現実感を欠いた美しさだ。

「あっ……」

唐沢楓は小さな悲鳴を上げ、両手で唇を覆った。

唐...

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