第423章

水原明一の声は重く沈み、瞳には深い憂いが宿っていた。「悟のことを、兄弟の命を見捨てて自分だけ生き延びた……そんな卑怯な男だと思っているかね?」

唐沢楓の胸に苦いものがこみ上げる。彼女はすぐさまおじい様の隣に腰を下ろし、その冷え切った手背に自身の温かな掌を重ねた。

「おじい様、私は一度だって水原社長を軽蔑したことなんてありません。もしそう思っていたなら、最初から嫁いだりしませんでしたわ。

あの誘拐事件……彼は若様と同じ被害者です。ただ、悟さんには身を挺して守ってくれるお兄様がいた。天の加護があって、こうして無事におじい様の元へ生きて帰れただけのことです。

若様のことは本当に残念に思いま...

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