第432章

屈辱は何百倍、何千倍にも膨れ上がり、彼の血管の中で沸騰し、狂ったように駆け巡る。

「唐沢さんに贈る馬だというなら、なぜここに繋ぐ? ここに繋いである以上、七瀬家の馬だと見なす。俺が引いて何が悪い」

七瀬烈司は指先で眼鏡の位置を直すと、唇の端を皮肉っぽく歪めた。

「じゃあ、あんたがここに繋いだら、僕も連れて行っていいってことになるのかな?」

「貴様!」

周囲から堪えきれない忍び笑いが漏れる。七瀬東司は顔を真っ赤にして半歩踏み出し、拳を固く握りしめた。

秘書が必死に止めていなければ、今にも七瀬烈司に躍りかかり、その胸倉を掴んでいただろう。

「烈司さん、些細なことです。こんなことで角...

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