第433章

彼が無事に帰還することを願いつつも、万が一傷を負うのなら、その傷を癒やすのは自分でありたい――そんな矛盾した想いを抱いていた。

「もう……私に夢なんてないわ」

唐沢楓の胸の奥が痺れるように痛み、酸っぱく、そして疼く。複雑な感情が渦巻く中、唇に浮かんだのは自嘲気味な笑みだけだった。

「今の私はね、濡れ手で粟、棚からぼた餅、果報は寝て待て……とにかく楽をして、一足飛びに頂点へ上り詰めたいの」

「ほう? 楓、君は読心術でも使えるのか?」

七瀬烈司は優しげに口角を上げ、彼女の耳元で低く笑った。

「奇遇だな。俺たち、気が合うようだ」

唐沢楓は眉をひそめた。

「男のくせに、まだ三十にもな...

ログインして続きを読む