第446章

彼女の脳裏に焼き付いて離れないのは、吹き荒れる吹雪の中、ただひたすらに立ち尽くし、黙って待ち続ける水原悟の姿だった……。

「誰にも言ってないわね?」

彼女は掠れた声で問いかけた。

「はい。あの方からは、他の方を騒がせず、お嬢様だけにこっそりお伝えするようにと……」使用人が答える。

「分かったわ」

唐沢楓は乱れた呼吸を必死に整える。高鳴る胸を抱え、広々とした庭を抜け、古風な趣のある正門へと向かった。

なぜだろう。あの日、あんなにも激しい確執があったというのに。今この瞬間、彼に対して恨む気持ちなど微塵も湧いてこない。それどころか、心臓が制御不能なほど早鐘を打っている。

私は、変な女...

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