第486章

ほんの少しずつ、そして微かに。柔らかく繊細な感触が、唐沢翔の唇の輪郭をなぞっていく。

唐沢翔の中で張り詰めていた理性の糸が、ついに音もなくぷつりと切れた。

充血した熱い瞳のまま、大きな手で彼女の後頭部を引き寄せる。荒くなる呼吸とともに、温かな舌がその唇をこじ開けた。ほのかな酒の香りを纏った彼女特有の甘く清らかな息吹を、深く、貪るように奪い尽くす。それは彼の全感覚を侵食し、心の奥底へと容赦なく踏み込んでいった。

今夜、なぜこんなことになってしまったのか。彼自身にもわからなかった。

だが、一つだけはっきりしていることがある。

この唇から離れたくない。絶対に、止めたくない……

和泉郁佳...

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