第512章

水原静香の着替えを手伝った際、彼女の腕にあった痛々しい注射痕の数々を思い出し、水原露美は思わず身震いした。

水原光景と水原静香はすでに寝室を別にしている。新田古美の事件以来、夫婦間の溝は以前にも増して深まっていた。

もし同じベッドで眠っていたら、あの注射痕を目にした水原光景はいったいどんな気持ちになるだろうか。

自室のドアの前まで来ると、ワインボトルを抱えた葵原千弦がぼんやりと立ち尽くして待っていた。水原露美は少し顔をしかめる。

「ワインをお持ちいたしました。お開けしましょうか?」

葵原千弦はびくびくと様子を窺うように尋ねた。

「結構よ、貸して。もう下がっていいわ」

水原露美は...

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