第517章

奥様に執拗に食い下がることさえなければ、これほど美しく際立った女を、彼とて徹底的に排除しようとは思わなかっただろう。

だが、惜しいことに……

唐沢楓はチンピラを一人片付けるや否や、後先考えずに林田瑛太のもとへ駆け寄った。

その時、骨の髄まで凍るような寒気が彼女の背後に迫る。

「お嬢様、危ない!」

林田瑛太は最後の力を振り絞って唐沢楓に叫んだ。あまりの恐怖に心臓が止まりそうだった。

唐沢楓の背後で、冷気を放つ短剣が高々と振り上げられていた。まるで死神の鎌の如く、彼女の命を刈り取ろうとしている。

「唐沢さん!」

葵原千弦は血の気を失い、恐怖のあまり固く目を閉じた。

唐沢楓は巨大...

ログインして続きを読む