第518章

唐沢楓は葵原千弦をその腕に抱きしめた。手のひらには生温かく、ねっとりとした感触が広がっている。震える手を持ち上げると、とめどなく涙が溢れ出した。

「千弦……あなた……」

「唐沢さん、聞いて……」

葵原千弦は薄れゆく意識のなか、力を振り絞るように唇を動かした。その顔色は、透き通るほどに蒼白だった。

「喋らないで、もう体力を使わないで。今すぐ病院へ連れて行くから」

楓は泣きじゃくりながら千弦の体を抱き起そうとしたが、先ほどの乱闘で体力を使い果たしており、もう指一本動かす力さえ残っていなかった。

「私が止血するから……」

千弦は力なく首を振った。

「もう、間に合わない。私、水原静香...

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