第522章

水原社長に身を屈してまでこのような真似をさせた人間など、これまで一人もいなかった。白石加尾がその最初の一人である。

まあ、いい。

彼も今はもう吹っ切れていた。不機嫌な顔で偉ぶるなど一番無意味であり、ただ反感を買うだけだと。

目下、彼と唐沢楓との間に一縷の望みを繋ぐためには……外堀から埋めていくしかないのだ。

白石加尾は煙草を深く吸い込み、丸い煙の輪を吐き出すと、からかうような視線を彼に向けた。

「お前、よく我慢できるな。この二日間、一度も中に入らず、ただ指をくわえて見ているだけとは。俺だったら、とっくに病室に踏み込んでるぜ……」

彼は目を細め、舌で唇を舐めた。

水原悟の手が微か...

ログインして続きを読む