第531章

水原悟は彼女の首筋に顔を深く埋め、荒い息を吐いていた。胸に込み上げる酸鼻な思いに、目元を赤く染めている。

「これからは俺がやる。お前が食べたいものなら、俺が作る。俺が覚えるから」

「もういいわよ。あなたには才能がないんだから、期待できないわ」

ハッと唐沢楓の瞳が縮んだ。恥ずかしさに唇をきゅっと噛み締め、失言したことに気づく。

どこからどう聞いても長年連れ添った夫婦のようで、これからの人生を共に歩むことを暗黙の了解としているみたいではないか。

水原悟はその言葉を深く追及しなかった。彼の頭の中は彼女の煙アレルギーのことでいっぱいで、罪悪感と悲痛な思いが入り混じっていた。

「もう作らな...

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