第116章

「そうだな」林野正明はうなずいた。「渡部綾香は昔、周防文哉にぞっこんだった。こっちが周防家と手を組まなきゃ……ふん。今は周防文哉が失脚したとはいえ、あいつにとっては本命だろう。だったら周防文哉に口説かせて、鈴宮京也を諦めさせる。いや――婚約パーティーの前に、周防文哉と駆け落ちさせられたら、なおいいじゃないか」

考えれば考えるほど、冴えた一手に思えた。

渡部綾香が自分から破談にして、昔の男と逃げたとなれば、鈴宮家の面目は丸つぶれだ。怒り狂った鈴宮家が渡部綾香を庇うどころか、渡部家にまで矛先を向けないだけ御の字になる。

そこへ林野佳恵を「代役」として差し出せばいい。両家の体面を保ちつつ、佳...

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