第117章

「渡部綾香に――駆け落ちさせるのよ」

林野佳恵は一語一語、噛みしめるように言った。瞳の奥で、どす黒い光がぎらりと瞬く。

「婚約パーティーの前に会いに行って。昔の情を持ち出して、心を揺さぶって、あなたと一緒に行かせるの。綾香が当日いなくなれば、鈴宮家は街中の笑い者。鈴宮京也も面目丸つぶれよ」

佳恵は唇を吊り上げ、さらに甘く毒を垂らす。

「そのうえ綾香は評判を失って、頼れるのはあなたしかなくなる。あなたは愛しい女を取り戻せて、鈴宮京也にも痛烈な一撃。もしかしたら周防家だって、あなたの「手腕」を見て跡取り候補を見直すかもしれないわね?」

周防文哉の心臓が、どくん、と跳ねた。

渡部綾香を...

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