第122章

午前3時――人がいちばん眠く、警戒がいちばん薄くなる刻。

渡部綾香の部屋のドアノブが、かすかに……ほんのわずかに回された。

扉の外には黒装束で顔を覆った男が二人。強力な睡眠薬を染み込ませた布とロープを手に、手慣れた動きで鍵をこじ開けると、音も立てずに滑り込む。

室内は無灯。窓から差す月明かりだけが、ベッドの上の掛け布団の輪郭をぼんやり縁取っていた。中には誰かが眠っている――そう見える。

二人は目を合わせ、瞳に喜色を走らせた。

片方が素早く近づき、掛け布団をはね上げる。そして「眠っている人間」の口と鼻へ、睡眠薬の布を一気に押し当てた。

「ん……っ」

短いくぐもった声。ひとつ身じろ...

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