第123章

黒塗りのセダンは、派手さこそないが防護レベルだけは異様に高い車が数台。

その中央の一台から、彼が降り立った。

渡部綾香のドレスに合わせたような、深い黒のオーダースーツ。背筋は真っすぐ、立っているだけで空気が変わる。

表情は薄い。

けれど、月光の女神めいた渡部綾香へ視線が触れた瞬間、底の見えない黒い瞳が、ほんのわずかに光を宿した。次の刹那には、いつもの淡い冷淡さへ戻る。

彼はそのままリビングへ入ると、まず渡部綾香を見た。

頭の先から足元まで、ゆっくりと。無傷であることと、その息を呑むほどの美しさを確認するみたいに。

それからようやく、顔色を失った林野正明と木村晴美へ目を向けた。

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