第130章

渡部綾香が鈴宮京也と密やかに抱き合っている、その裏側で――リリスは、完全に壊れていた。

「殺して。あいつを」

受話器の向こうの父に向けて、リリスは掠れた声で言う。静かで、あまりにも静かで、背筋が凍るほどに。

「パパ、助けて。鈴宮京也を――殺して」

電話の向こうは長い沈黙ののち、黒谷家当主の疲れ切った、冷たい声が落ちてきた。

「リリス、お前は狂ったのか。何度言えばわかる。鈴宮京也に手を出すな、と警告したはずだ。……これで、結果がわかっただろう」

「結果?」

リリスは不意に甲高く笑い出した。笑い声の中に、狂気と絶望がべったりと絡みつく。

「パパ! あいつ、私の犬を殺したのよ! 殺...

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