第139章

海風が唸り、爆発の余波が背中を追い立ててくる。

沈村敦司はヘリのハッチに立ち、眼下の豪華客船を見下ろした。ゆっくりと、確実に沈んでいく船体。

火柱が夜空を突き、黒煙が渦を巻く。漆黒の海と空を、まるで昼のように白々と照らし出していた。

彼は片手を上げ、風に乱れた襟元を優雅に整える。口元に、意味深な弧。

「……面白い」

小さく漏らした声は、炎の明滅に合わせて揺れる灰色の瞳に、掴みどころのない光を宿していた。

遠方――夜の海を切り裂くように、一隻のボートが疾走してくる。速度が違う。救助艇のそれではない。

闇夜の船だ。渡部綾香の命で、事前に配置されていた迎えの戦力。

沈村敦司の視線が...

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