第148章

林野正明はソファに崩れ落ちたまま、全身が氷みたいに冷え切っていた。

木村晴美が攫われた。

しかも――木村晴美の腹には、彼の子がいる。二十年以上も待ち続け、ようやく授かった息子。たった一人の、待望の跡取りが。

林野正明は一睡もできないまま夜を越えた。

何度も寝返りを打ちながら考える。鈴宮京也が渡部綾香の婚約者になった途端、あの残忍なヤクザ組長がどれほど恐ろしい男か――自分は、忘れたつもりでいたのではないか。

心のどこかで、渡部綾香とはまだ「家族」だと思い込んでいた。だから自分には、鈴宮京也の苛烈なやり方が直接降りかかることはない、と。

だが、甘かった。

鈴宮京也みたいな男が、渡部...

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