第23章

彼の言葉は、含みが深かった。

渡部綾香はそっと視線を落とし、貫くような眼差しを避けて小さく言う。

「……うまく乗り越えられるといいのですが」

鈴宮京也はそれ以上追及しなかった。だが、値踏みする気配と疑念は、完全には消えていない。

この女の出現は出来すぎている。落ち着きと手際も、甘やかされて育っただけの「お嬢さま」の範疇ではない。

彼は口を閉ざしたまま、昼食は微妙に張り詰めた空気のまま終わった。

渡部綾香にはわかっていた。鈴宮京也の疑いは、まだ解けていない。

それでも怖くはない。決定的な証拠さえ出なければ、この説明は崩れない。

そして――闇夜の存在だけは、絶対に知られてはならな...

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