第36章

渡部綾香――こいつは、想定外の変数だ。

しかも、あの可愛い弟との距離が……俺の見立てより、ずっと近い。

彼はコーヒーカップを置き、指先で机を軽く叩いた。

計画を、少しだけ組み替える必要があるな。

渡部綾香は鈴宮深にしばらく積み木を付き合ってやり、メイドに任せて幼児教室へ行かせた。その直後、スマホがせわしなく鳴り出す。

画面に踊っていたのは『父』の文字。

渡部綾香の瞳がひやりと冷えた。スライドして通話に出る。声は波一つ立たない。

「……もしもし」

返ってきたのは、林野正明の怒りを押し殺した声――その奥に焦りと詰問が絡む。

「綾香! 昨日の夜、どうして帰ってこなかった! ...

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