第54章

林野正明の声は、涙混じりに震えていた。娘を案じているのか、家の面目が潰れたことが堪えたのか――あるいは、その両方か。

渡部綾香は合わせるように息をのむ。胸を痛め、驚愕をにじませて言った。

「そんな……どうして?! 暴走族に? 警察には通報したんですか? 犯人は捕まったんですか? 佳恵は今どうしてるんです、落ち着いてますか?」

「通報はした! だが警察は調べるって言うだけで、ああいう連中は捕まる見込みが薄いんだ!」林野正明は焦りと憎しみで声を荒らげる。「佳恵はいま病院だ。情緒がめちゃくちゃで、泣き喚いて自殺するって……俺も母親も、気が気じゃない! 綾香、お前は今、鈴宮さんの婚約者だろ。鈴...

ログインして続きを読む