第64章

ドアが閉まった途端、シベットの顔から、あの仕事用の硬い仮面がすっと剥がれ落ちた。瞳に戻るのは、いつもの鋭さと機敏さ。

彼女は手早く室内を一巡し、盗聴器の類がないことを確かめてから、声を落とす。

「首領。遅れて申し訳ありません。鈴宮家の警備が想像以上に厳しく、身分の手配に時間を取られました」

書斎机の向こうで、渡部綾香が軽く手を振った。

「いい。あなたのせいじゃない。鈴宮智也の件があって、鈴宮京也が神経を尖らせてる。むしろ今は好都合よ」

一拍置き、淡々と告げる。

「これから外では、あなたは佐藤。いいわね」

「承知しました、首領」

シベットは頷き、すぐに表情を引き締めた。

「…...

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