第66章

「俺のため?」

渡部綾香はその言葉を反芻し、隠しもしない嘲りを滲ませた。

「私が十八のときの醜聞を掘り返して証拠にして、裁判所に『監護が必要』だって申し立てるのも? 専門家にそれとなく『精神状態に疑いがある』なんて言わせるのも? 林野正明……どうして林野佳恵には、そこまで『よくして』あげないの?」

林野正明は仮面を剥がされ、顔に一瞬だけ苦さが走った。すぐに声を落とす。

「綾香! 父親に向かって、なんて口の利き方だ! あれは……あれは仕方なかったんだ。法的な手続き上、必要で……!」

言い訳は途中で苛立ちに変わる。

「お前こそ、今の自分を見てみろ。裏社会の連中とつるんで、すぐ刃物だ銃...

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