第75章

翌朝。渡部綾香はいつもどおり、きっちり同じ時間に目を覚ました。

――が、ひとりじゃない。

身じろぎした瞬間、腰にどしりと重い腕が回っているのを感じた。熱を帯びた、硬い抱擁。逃げ道を塞ぐみたいに、しっかりと。

綾香はわずかに目を瞬かせ、そっと首だけを巡らせる。

鈴宮京也の寝顔が、吐息の届く距離にあった。

目は閉じられ、いつも険しい眉間の皺はほどけている。呼吸は深く、規則正しく、彼女よりもずっと眠りが深い。窓から差し込む朝日が、高い鼻筋と濃い睫毛に淡い輪郭を落として、起きているときの冷たさや鋭さを薄めていた。珍しいほど、柔らかい。

――帰ってないの?

綾香は小さく驚く。

何度か関...

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